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LUCENT ATHLETE FILES #05 「短いようで長かったオーストラリア大陸の4,400km」いいのわたる選手

ルーセントアスリートを紹介する連載企画「LUCENT ATHLETE FILES 」の5回目は、トレイルランナーいいのわたる選手です。

2023年から五大陸走破の旅を開始。24年3月に北米大陸、25年3月に南米大陸を走破し、昨年11月にはオーストラリア大陸を走破したばかり!五大陸走破に挑戦しているウルトラランナー・いいのわたる選手へのインタビューです!

――ランニングを始められて、五大陸走破のプロジェクトに取り組むに至った経緯を教えていただけますか。
もともと走り始めたのは社会人になってからで、最初はダイエット目的でした。いろいろなマラソン大会を走るようになり、その中でいろんな方々と出会い、もっと長い距離であったり、より過酷なレースを知り、出場するようになりました。サハラ砂漠であったり、標高5,000mを超える山岳地帯、本州縦断などのレースを走っていくうちに、地球を丸ごと走るという目標を抱くようになりました。

――直近まで走られていたオーストラリア大陸はどんな旅になりましたか?

99日間でパースからシドニーのオペラハウスまで走りましたが、実はプラス1日でトータル100日間でした。オペラハウスのゴールでもよかったのですが、五大陸走破のコンセプトは海から海。ということで、最後にもう1日走って海まで行きました。

走り終わった時の感想は、短いようで長かったということに尽きます。北米、南米ではそれぞれ1万kmを超える走行距離だったのに対して、今回はトータルで4,400kmと、ほかの大陸に比べて、半分以下でした。頭の中では短いだろうと思っていたのですが、前半はとても長く感じました。

――長く感じられたのはどうしてですか?
オーストラリアは人口の99%近くが沿岸部に集中していて、スタートした西海岸の都市・パースもその一つです。街を離れてしまうと、ほとんど人のいない荒野でした。見かけるのは路上や道の脇に横たわる、虹を渡ったカンガルーだけで、もう動かなくなったカンガルーが1kmごとに転がっている印象でした。乾燥しているからか、ミイラ化していました。

平坦な道がずっと続いているのもキツかったです。4,400kmを走って累積獲得標高は24,000mくらい。これは山岳100マイル(160km)レース2回分です。山岳レースの10分の1以下のアップダウンしかありませんでした。登りや下りがあると、使う筋肉が変わるので、脚の負担を分散させられるのですが、フラットな道だと、同じ筋肉を使ってばかりでキツいし、痛みが分散されませんでした。

 

――単調な道が精神的にも肉体的にもキツいというのは想像のつかない世界です。
人や動物との出会いはないですし、たまに見かけるカンガルーとハエだけが友だちでした(笑)。あとは蚊がひどかったです。ネット付きの帽子をかぶってないとやってられませんでした。

――過酷な環境下におかれて食事や寝泊まりできる場所はしっかり確保できていたのですか?
治安に関しては危ないことはなかったですし、たまに野宿もしましたが、食料だけちゃんと持っていければ、食い繋いでいけます。キャンプ文化は発展していて、キャンピングカーはすごく往来していましたし、車で旅する人も多いからか、街はなくても宿泊施設は定期的にあって何とかなりました。ベッドしかない部屋だけど、シャワーはあるし、ガソリンスタンドとコンビニ、食堂も付いていました。

――ひとつの大陸を走り終えて体感することや、帰国して感じる日本のよさはありますか?
どの大陸でも同じですが、持っていけるものは限られるし、生活に必要なものは限られているということです。走りながら携行できるものもそうですし、サポートカーに積めるものも限られています。トイレットペーパーひとつに頭を悩ませるわけですが、日常に戻ると、ケチらなくなっていきます。あとは日本食が嬉しいです。

 

――オーストラリアでも日本食はありそうですが
そう思われるかもしれませんが、テイストが全然違うんです。料理の仕上げに味の素をふんだんにかけているような感じでした(笑)。
オージー・ビーフを食べていたからか、今回は体重が1.2kg増えちゃいました。南米の時は挑戦の前後で体重の増減がありませんでした。痩せなくなったのは、毎日70kmを走る生活に体がさらに適応したからかもしれません。

――食事での苦労や気を使っていたことはありますか?
西側の荒野を走っている時、野宿の時はインスタントラーメンや乾いた保存食ばかり。栄養が偏りがちなので、食物繊維があるものを積極的に取るように心がけていました。西側だと野菜が手に入りにくいので、オートミールが手に入りやすくて重宝しました。

――体重以外の肉体的な変化は?
走力がかなり落ちました。ゆっくり長く走る能力は毎日鍛えられますが、それは1km6分くらいのペースです。スピードを出して走る力とは別物の走力です。帰国してフルマラソンを走ったのですが、そこで3時間を切れませんでした。エイドに立ち寄りすぎていたのもありますが、ちょっとタイムが落ちすぎなので、鍛え直しています。

――オーストラリア大陸を走って得られたものはありますか?
オーストラリアだけでいったら、あまりありませんでした。事前に想像していた通りというか、想像に近くて、予想外がなかったです。アラスカやパタゴニアの端だったり、コロンビアや中米などは未知なところで、現地で想定外のことが起きてエキサイティングだったのですが、今回はそれがなくて、こなしてしまっていました。

そうは言っても、イレギュラーなことはありました。ドネーションの文化が根付いていて、出会った人たちがお金を寄付してくれて、総額で5~10万円くらいはいただきました。ドネーションのお返しに(オリジナルの)ステッカーを渡すくらいしかできなかったのが残念でした。
ほかにも、食事をごちそうになったり、SNSを通じて連絡がきて「地ビールがあるから飲んでいかないか」と誘われたこともありました。ビールを1杯飲むのを想像していたら、現地に行ったらビール会社の重役で、大きな工場でびっくりでした。ほかの大陸に比べると、予想外なことは少なかったけど楽しかったです。

ほかの大陸に比べると、動物との出会いは多かったです。キャンプしていると、朝からテントを叩いていく動物がいて、そのシルエットでテントの中からでもカンガルーだなと分かるんです。ワラビーも警戒心が薄くて、餌をあげると寄ってきました。
エミューにも遭遇して、その時はがんばって追いかけました。むこうは歩いているくらいのペースでしたけど、全然追いつけませんでした(笑)。

 

――日本に暮らしていると聞けないような話ばかりですね。次の大陸はどんな非日常が待っているのか楽しみです!
残っているアフリカ大陸、ユーラシア大陸の下調べをしていますが、アフリカはなかなかリアルタイムの情報がなくて困っています。外務省の危険情報でレベルが低くても、国全体なのか、地域ごとなのかとか、道がつながっているのかなど、国ごとに調べないといけないので、キリがないくらいです。現地の情報に詳しい方や詳しい方をご存知でしたらぜひご連絡ください!

 

いいのわたる|トレイルランナー

世界を舞台に極限の長距離走への挑戦を続けるウルトラランナー。走り始めたのは社会人からという異色の経歴ながら、海外のウルトラ系レースなどで優勝多数。多くのメディアからの注目を集める日本を代表するアスリート。

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