ルーセントアスリートを紹介する連載企画「LUCENT ATHLETE FILES 」の2回目は、トレイルランナー枝元香菜子選手です。
世界最高峰のレースUTMBを完走したばかりの枝元選手。同じくレース出場で現地フランス・シャモニーを訪れていたルーセント取締役・此下竜矢との対談です!

―― 二人がトレイルランニングを始めたきっかけとは
枝元 トレイルランニングを始めたきっかけは、タマネギをもらって嬉しかったからなんです。初めてのレースが赤城山の大会で、優勝してタマネギを賞品でもらえたんです。ほかにもいろいろもらったんですけど、それが嬉しくて。それから、いろんな大会に出るようになりました。
此下 タマネギ(笑)。ぶっ込んできますね。初めてがレースだったんですね。
枝元 大学院生の時で、周りに男子しかいなくて、みんなで駅伝に出たり、走ったりしてたんです。それで、たまたまレースを見つけて15kmくらいの大会があるから、みんなで旅行がてら出ようってなって。ウエストポーチをつけて、SAVASのピットインエナジージェルとか入れて走ってました。
此下 もともとランニングはしてたんですか?
枝元 ソフトボールを中学から大学院までずっとやっていました。走り始めたのは、大学の時に東京マラソンを走りたくて、4年間ずっと応募し続けて4年目に当たったので、トレーニングをしようって。ピッチャーだったんで走り込んではいたんですけど、ランニングとして始めたのはその時ですね。
此下 枝元さんが大学院生の頃というと、僕と同じくらいの時期ですね。僕はちょうど10年なんです。
枝元 始めたきっかけはなんだったんですか。
此下 2015年に兄が100マイル(160km)のトレイルレースを完走したんです。それを応援に行って、かっこええな、僕もやってみたいと思ったんで、初めから100マイルを走りたいと思って走り出したんです。
枝元 初めから100マイルに憧れてってすごいですね。
此下 そこから実際に走り切れたのが2019年。この年の12月に初めて100マイルを走って、翌月に80マイルのレースを走りました。
枝元 いきなりそこにいくんですか。
此下 だいぶ走れるようになったところでコロナになって、ちょっと悲しかったなあ。
―― どんなレースを走ってきたか
此下 今回が何本目の100マイルレースですか?
枝元 私は100マイルはMt. FUJI 100だけで、途中で中止になったのも含めると4回出場しました。初めての100マイルチャレンジが雪で中止になった年です。その時は富士吉田(154km地点)までしか走れませんでした。
此下 まだ大会名が「UTMF」だった2019年ですね。100マイルレースの楽しさはどこに感じていますか?
枝元 100マイルは旅するから楽しいんじゃないかって思います。UTMBはトレイルを始めて世界のレースを知った時から、ずっと走りたいと思っていました。私もいつかは、あそこでと。
此下 100マイルはUTMBを完走して卒業ですか?
枝元 はい、競技としては100マイルは卒業です。いつか年齢を重ねてから出るかもしれませんが。
此下 日本代表に選ばれる人でも、100マイル走れなくてもええやんと思っているのは大切なことですよ。
枝元 どういうことですか。
此下 ぼくらのツアーはどうしても100マイルをメインに始まっていて、100マイルがどうしても花形になってしまっているんですね。僕がルクタスアドベンチャーズでずっと言っているのは、20km、50kmの大会に来ていただけるお客さんを増やそうということなんです。そういう人を増やさないと、裾野が広がっていかないんですね。いきなり100kmを走るのは遠すぎて難しいじゃないですか。
此下 走っていて、順位を意識することはありますか?
枝元 あんまりないです。周りの方が意識しているかもしれません。「前が近い」と言われると、ああ近いのか、もうちょっと頑張ろうと思うくらいです。日本代表として出場した2024年の世界選手権は頑張らなきゃと思いましたけど、UTMBくらいに規模が大きくなると、もはや前後も分からないですし。
此下 今回のUTMBは何時間くらいのタイムでのゴールを考えていたんですか?
枝元 30時間前後でいけたらいいなと思っていました。でも、初めてなので、35時間とか、33時間くらいかかるかもしれないかなと。どこで自分が潰れるか分からないので。
此下 トップ選手にはあまりない感じのコメントですね。
枝元 トップ選手じゃないですよ。
此下 いや、日本代表はトップ選手なんですよ。日本代表をトップ選手じゃないって言ってしまったら、みんなどうしたらいいんだってなりますよ。
枝元 いえいえ、私は去年なので「元」なんで。
此下 元でも日本代表は日本代表ですって。日本代表というと、コンペティションに対してすごく前に行くこと、戦う闘争心がすごいじゃないですか。そういうのはありますか?
枝元 私は誰にもついていかないし気にしません。後ろにつかれるのだけが嫌です。自分のペースをずっと貫くんで、誰かについていくこともありません。私の場合はトレイルランニングが本気の趣味なだけです。完走したらみんなが勝者ですよ。
此下 それもトレイルのいいところですよね。
枝元 そういえば、去年OCC※1)に出場した時は仙骨疲労骨折してたんです。※1) UTMBワールドシリーズの50Kカテゴリーの最終戦で、スイスのオルシエールをスタートしてシャンペを経て、フランス・シャモニーに至るレース。枝元選手は2024年に女子47位(総合167位)で完走。
此下 仙骨の疲労骨折?それで走ったんですか。
枝元 7月に骨折して、レースを全部キャンセルしたんですけど、OCCは航空券も取っていたんで、そこで調整して、9月に控えていた世界選手権に出ることに決めました。
此下 疲労骨折って痛いんでしょう。僕は人生で骨折したことないんで分かんないですけど。
枝元 私も初めてでした。仙骨に亀裂が入って、違和感はありました。痛かったです。
此下 枝元さんはUTMBを卒業しても、トレイルは走るんですよね?
枝元 はい!10月に韓国の「TRANS JEJU by UTMB」で楽しく走ります。これからは行きたいところに行って、出たいレースに出ようと思ってます。
此下 僕たちは20kmのレースで海外に行って、大会以外にも旅を楽しめる文化をルクタスアドベンチャーズで作っていきます。走ることも旅の一部というツアーをね。
枝元 走ること以外に、観光と美味しいご飯のセットがいいですね。レースだけで終わらないところに旅の醍醐味があります。
―― 普段どんな生活をしているのか
此下 食事とか気にしていることはありますか?
枝元 めっちゃ気にしています(笑)。栄養面も気にしていますが、なるべく身体に良いもの摂りたいと思っているので、ほとんど外食しないし、お惣菜とかもあまり買わない、ファストフードやカップ麺は全く食べないです。主食、野菜、納豆。納豆はこだわりあります(笑)。
此下 納豆好きな人たちに向けて、納豆を食べればこうなれるってしっかり書いてください(笑)。
枝元 明日香野※2)さんで乾燥納豆を出してください。※2) ルーセントのグループ会社の和菓子メーカー。
此下 甘納豆?
枝元 甘くない普通の納豆で。母が作って持ってきてくれました。普通の納豆を乾燥させたもので、海外だと納豆が食べれないので。それをサラダにかけたり、普通に食べたり。
此下 発酵食品で商品を作るのは難しいですね。発酵のノウハウが必要になりますからね。
枝元 トレーニングで月間の走行距離とか気にされますか?そういうログやデータを取ってなくて。
此下 意外ですね。
枝元 月間どれくらい走るんですかって聞かれても、分からないですみたいな。気の向くままに走ってますって答えるしかないんです。
此下 枝元さん、ナチュラルで天真爛漫ですね。超自然体。
枝元 走るのが好きなだけなんです。外を走る気がない時は、ジムでアニメを見ながらクロストレーナーやったり。
此下 アニメを見るんですね。
枝元 30分で切れるんでちょうどいいんですね。
此下 どんな作品が好きなんですか?
枝元 何が好きというのはなくて、アマプラで見られるやつを見てます。こだわりがないんですね(笑)。
此下 教員をされていて、同時に博士課程にも進まれていますよね。メインの研究は高所順応ですか?
枝元 はい。いろいろやりたいことはあります、博士課程で在籍しているところは、高所の滞在での変化です。はじめはトレラン関係でやれたらいいなと思っていたんですが、トレランだと条件が変わるから難しすぎて、焦点を絞らないと厳しいですね。それで、一般の人にも還元できる研究ということで、高所への公共交通機関での移動や時間の変化というのを研究することにしました。今回はツアーのお客さんがロープウェーで移動される時に手伝っていただき、2回も測定させていただきました。
此下 なるほど。何の変化を見ているんですか。
枝元 酸素摂取量や血圧、自覚症状の個人差です。客観的な指標でどう変化があるのかを見ていけたらいいなと思っています。
此下 話は尽きませんがまたの機会に。枝元さんも頑張ってください。
枝元 頑張りましょう!
枝元 香菜子|トレイルランナー

大学教員として勤務しながら国内外で活躍するトレイルランナー。2024年には日本代表として世界選手権やアジア太平洋選手権に出場。レース成績だけでなく、その人柄でも多くの人を魅了している。
Instagram:@edamokana
